© Gorellaume

3月13日から18日まで、北上ふるさとプロジェクト代表の杉原敬と、その友人である星匠さんと、Maiko Eilzabeth Sato Karamさんは、フランスから来た「SILK ME BACK」というプロジェクトのメンバー4人と行動を共にしていました。

「SILK ME BACK」とは、イザベル・ムーラン( Isabelle Moulin )さんが発起人となった、東日本大震災で津波の被害にあった人たちに向けた慈善活動です。元はオートクチュールの世界で活動し、今は空間演出や美術展のキュレーションなどをしているイザベルさんは、3.11の報道を見て、日本人のために何かをしたいという気持ちが強くわき起こったそうです。

調べてみると、フランス第二の都市であるリオンが日本と強い結びつきを持っていたことを彼女は知りました。19世紀のリオンはヨーロッパの「絹の街」として繁栄を誇っていたのですが、1850年ごろ、蚕の伝染病である微粒子病がヨーロッパに蔓延して、絹織物産業が大打撃を受けてしまいます。その時、開国直後だった日本の織物業者が、病気に強い日本の蚕と生糸いっぱいの箱を一万五千箱もプレゼントし、そのおかげでリオンは危機を脱したという歴史があったのです。

この事実を知ったイザベルさんは、150年前の絹のお返しをするべきだと考え、東日本大震災の被災者のためにアーティストがつくった「キモノ」をチャリティーオークションにかけ、その収益を寄付する「SILK ME BACK」という活動を思いつきました。彼女の想いは、27人のアーティストに共有され、さらにリオンの市長やファッションブランドのエルメスなどのサポートを得ることに成功します。リオンの繊維工場跡地でのショーを皮切りに、フランス各地を一年間かけて巡回したのち、2013年の2月9日に、ルーブル美術館近くのホテル「Hôtel The Westin Paris-Vendôme」でオークションを実施。27点のキモノは完売したそうです。

SilkMeBack@ Soieries Bonnet, Jujurieux .

Kimono de Iznao. Silk Me Back @Galerie de Nesle, Paris. Photo de Guy Hersant.

Kimono de Franck Josseaume. Silk Me Back @Galerie de Nesle, Paris. Photo de Guy Hersant.

「SILK ME BACK」と「北上ふるさとプロジェクト」は、フランス人の父と、日本人の母を持つアーティスト:マイア・バルーさんを仲立ちにして知り合いました。今から1年半ほど前の話です。英文の企画書をつくったりしながら、やりとりを続けました。寄付先として、自分たちのように小さい団体を探していたイザベラさんたちにとって、「北上ふるさとプロジェクト」はふさわしい相手としてうつったようです。小さくて、活動が目に見えてお金の還元が早い行動力のある団体が、彼女たちの希望でした。ただ、オークションを行うのが2013年の予定だったため、「We Are One Market(正式名称はこうなりました)」の建設には、「SILK ME BACK」からの寄付金は当面考慮にいれず、進めることにしました。

チャリティーオークションの案内

寄付金の受け渡しと、関連イベントへの参加のためにイザベルさんたち4人が日本に着いたのが3月8日のことです。イザベラさんにとって、初めての来日でした。

まずは3月11日、東日本大震災が起きた日に、ウェスティンホテル東京のイベントスペース「楓」にて「SILK ME BACK」プロジェクトと、そこで制作された「キモノ」の紹介をしました。その翌日、仙台に移動して「北上ふるさとプロジェクト」のメンバーと合流し、18日まで行動を共にしたのです。

ウェスティンホテル東京のイベントスペース「楓」にて

来日したのは、「SILK ME BACK」の代表である Isabelle Moulin(イザベル)さん。「SILK ME BACK」の展覧会のカタログデザインも手がけた、グラフィックデザイナーの Jérôme Granjon さん。今回の旅の映像記録を担当しているビデオディレクターの Lucas Manificat さん。それとペイントアーティストで、キモノのデザインにも参加した Gorellaumeさんの4人。

受け入れ側としては、通訳をつとめてくれた、パレスチナ人の父と日本人の母を持つ Maiko Eilzabeth Sato Karam さん。旅行中の間のドライバー役を買って出てくれた星匠さんが、旅程の全てに同行しました。北上町では、「We Are One Market」の設計を担当した佐々木文彦さんと、施工の元請け会社を引き受けてくれた(株)リュクスの社長の佐々木至さん、建設資金を支援してくれた「Architecture for Humanity」の吉川彰布さん、藤岡のぶこさん、それと北上ふるさとプロジェクトの広報担当の持留が出迎えました。

Isabelle Moulin さん

Jérôme Granjon さん

Lucas Manificat さん

Gorellaume さん

Maiko Eilzabeth Sato Karam さん

佐々木至さん

吉川彰布さんと藤岡のぶこさん

石巻市市街地や北上町を皮切りに、女川町 → 一関市 → 気仙沼市 → 福島県相馬市 → 南相馬市原ノ町 → 西会津町 → 埼玉県川越市 → 日高市、と駆け抜けた旅は、イザベルさんたちにとって、体力的にも精神的にも、かなりヘビーな旅行だったと思います。

旅の途中、イザベルさんたちは、杉原をはじめとする出会った人たちにビデオインタビューを重ねていました。「震災の当日は何をしていたか?」「その後、どんな行動をとったのか?」「あなたの5年後の状況を予想してみてください」…といった内容です。それまで遠くフランスの地で、メディアを通してしか知り得る事のなかった当事者たちの声と、被災地の風景を目の当たりにして、イザベラさんたちの心は大きく揺さぶられたのだと思います。


SILK ME BACK IN JAPAN I JAPANVISION#3

「この場所は歴史的に何度も津波の被害にあっているそうだけど、なぜ他の土地に移住していなかった? フランス人ならそんな場所には住まない。」 旅の始めの頃の、イザベラさんの素朴な疑問です。
「この地方の人は、自然の恵みと隣人との助け合いによって暮らしている人が多い。だから、都会の人たちのように、気軽に引越さない人がたくさん住んでいた。」
日本人の「つながり」に対する濃密な想いは、旅を重ねて多くの人と接することによって、イザベルさんたちにも伝わっていったのではないでしょうか。

We Are One Market にて

旅の行き先は、主に杉原が決めていました。前半は東日本大震災の傷跡と、そこからの復興の過程を見てもらうために、女川町や気仙沼市、福島県の相馬市や南相馬市をまわりました。星匠さんや、杉原が建設に関わった相馬市の「こども文庫にじ」にも立ち寄っています。

震災や原発事故は痛ましいことですが、それだけを日本の記憶として持ち帰るのではなく、伝統的な文化にも触れ、それを日本の良さとして伝えて欲しいとの願いから、伝統工芸の会津塗や、甲冑作りの工房なども訪ねました。

イザベルさんにとって「たちばな甲冑工房」の職人、橘斌さんの言葉がとても印象に残ったそうです。1体つくるのに4〜5年もかかる、宝物のような甲冑が立ち並ぶ工房で、「この中で一番大事なのはどれですか」とイザベルさんが聞きました。すると、橘さんは「自分だ。」と答えたのだそうです。

彼がどのような想いを込めて、そう答えたのかはわかりません。津波によって一瞬で失われてしまった「モノ」の儚さ。それでも新たな「モノ」を生み出すことのできる「ヒト」の力。継がれていくことがない伝統文化を持っている「自分」…。きっと様々な想いがあるのでしょう。イザベルさんは、この言葉をとても深く受け止めました。

たちばな甲冑工房

その後、北上ふるさとプロジェクトのメンバーである綾部工務店の刻み小屋や、以前に杉原が伝統構法で建てた日高市のカフェ「日月堂」などを訪ねました。その時のもようがショートビデオにまとめられています。プロジェクトメンバーの蓮実が刻みをしている様子が写っています。


SILK ME BACK IN JAPAN I JAPANVISION#6

18日に杉原たちと別れたイザベルさんたちは、「SILK ME BACK」に参加した日本人アーティストの一人、冨士原桃子さんの展覧会のオープニングセレモニーにキモノと共に出たのちに、フランスに帰国していきました。移動距離は2000kmにも及びました。

今後の活動としては、5月を目処にプロジェクトに関する記録、映像やカタログなどをまとめて、それを収録するUSBメモリを制作する予定だそうです。

「SILK ME BACK」からの寄付金ですが、北上に住む人たちのために役立てられるよう、使い道を検討しています。決まったところで、この場でご報告します。

SILK ME BACK IN JAPAN I JAPANVISION#7 より

SILK ME BACK 公式Webサイト:http://silkmeback.blogspot.fr/
SILK ME BACK tumblr:http://silkmeback.tumblr.com/
SILK ME BACK on Vimeo:http://vimeo.com/user16517346
JBPRESSによるSILK ME BACKの紹介記事:http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37338

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