畑とプランター栽培での水と肥料

 永田農法は、肥料と水を極限まで切りつめて野菜を栽培する「スパルタ農法」などと言われるそうですが、果たして、本当の意味のスパルタでしょうか。肥料と水を切りつめるという点を、少し検証してみたいと思います。

 『永田農法でかんたん、おいしい野菜づくり』(監修:永田照喜治氏・杉原葉子氏、発行:主婦と生活社)では、畝のサイズを明確に記しています。私は、この畝とまったく同じ大きさでなければ永田農法の野菜は出来ないとは考えていませんが、畑とプランター栽培における水と肥料の施し方の基本として、頭の片隅に置いています。

 同書によると、畑では「畝は、グン!と高くつくる」と高畝を勧め、適量の液肥を混ぜた水やりを週に1回行います。

 高畝により、水はけは良くなり、[いわゆる]水を切りつめたとも言えなくはないのですが、よーく考えなくてもお分かりのように、野菜を育てるのに、フツー、毎週畑に水やりするでしょうか。

 また、この本には「畳1畳あたり10リットル・・・」と液肥入りの水の量まで書いてあります。

 畳1畳、10リットルって・・・! 

 永田農法は、これだけの大量の水を土壌に与えておき、かつ、高畝にすることによって、必要最小限の水と肥料を野菜の根っこが吸収できるシステムなのだと、私は解釈しています。

 私の解釈が正しいかどうかはわかりませんが、我が家の1坪畑と、3階テラスのプランター栽培では、この解釈に基づいた液肥水やりを続けて、野菜を育てています。

畑の場合

 我が家の1坪畑は、土の量と畑の面積の関係で、一連の永田農法の指南書が勧めるような30センチの高畝は不可能です。もし真面目にやれば、一畝しか作れませんが、不真面目な私は、ちょいと工夫して、15センチから20センチぐらいの高さで、小さめの畝を2本、プラス(日当たりが悪くても育つ野菜向けの)細い畝を1本作っています。

 畝の高さ(というより、低さ)に合わせて、液肥水の量を、畳半畳の畝に対して、1週間ごとに約2リットル。

 晴天続きの夏場は途中に水だけをやったり、雨が降れば液肥水やりは2、3日後にずらすようにしています。

 季節によって、野菜の種類によって、必要な水の量が大きく異なり、ここが一番難しいところです。

 トマトのように、水も肥料も少なめがよい野菜は、葉が萎れかけるまでほったらかしにしておけます。

ナスのように(特に私の好物である水ナス)水と肥料を多く必要とする-と一般に言われている野菜は、過去2年の【石ナスばっか】経験におびえて、今年は液肥水を大量にやりすぎたようです。

 数個の長なすと水ナスが収穫できただけで、花が結実せずに落ちてしまうという結果に終わりました。

プランターの場合

 我が家のプランター置き場は、3階テラスです。日照時間の限られる地上の畑とは正反対に、遮るもののないコンクリートのテラスに日が降り注ぐ、(夏場は)熱地獄となります。

 コンクリートをむき出しにしないよう、ウッドパネルを敷いていますが、それでも熱は相当のもの。

 従って、日向土に20%かそれ以上の保水材を混ぜて、畑になるべく近い水環境を作ってやることで、厳しい夏も乗り越えています。

 我が家の特殊条件ですが、年に2~3回、帰省のため1週間から10日ぐらい留守にすることがあります。畑の水やりは心配無用ですが、3階のプランターに植えた野菜は、10日も水なしでは生き延びることができません。そこで夏の留守中は、プランターを全部玄関周辺に置いて、お隣さんに水やりのおせわになります。

 しかし、年に何回も、プランターを移動し、毎回お隣さんにお願いするのも辛いものです。

 今年はプランターの数が10個を超したこともあり、秋の留守には、プランターの水抜き穴をふさいで、たっぷり水やりしてから出かけました。おかげで、加湿による障害はありましたが、少なくとも枯れることは防げました。

 永田農法は「少なめの水と肥料で栽培する農法」と簡単に言い切れるでしょうか。

 私流は「不要なものを省いた農法」のほうが適切ではないかと思っています。

 

なぜ永田農法か

 畑を作る前に、自分なりに資料を集めてみて、これだ!と思ったのが永田農法だったのです。

 一番大きな理由は、堆肥を使わず、どんな土でも液肥だけで野菜が作れることでした。

  堆肥を入れるのは簡単ですが、一番心配だったのが、臭いです。完熟堆肥なら臭わないとNHK教育放送の『野菜の時間』では強調していますが、近くのホームセンターには、完熟堆肥という商品はありません。(堆肥や野菜の土はいくらでも、少し高いなという値段で売っています。)

 昔に住んでいた公団の空き地で、野菜を栽培している方がおられ、ナスやキュウリなどに目が行くより先に、遠くからでも感じる臭いと大きなハエが嫌だなぁと思っていました。完熟堆肥じゃないから、臭いとハエがでるのかもしれません。ともかく、完熟堆肥なるものが手頃に買えない状況で、ご近所に迷惑をかけるかもしれない畑作りだけは避けたかったのです。

  我が家の庭は、前の住人が園芸好きだったようですが、めんどうになってからは手入れを完全に放棄された、草ボウボウで足の踏み場もない姿でした。リフォーム業者に雑草を全部引っこ抜いてもらった後は、ただの荒れ地。まさに永田農法の生みの親、永田輝喜治氏が様々な野菜を育てておられる(と諏訪雄一氏の本で紹介されていた)土にそっくりでした。永田氏の畑の写真を見て、これならウチの庭と変わらない!と嬉しくなりました。

土の量が足りないので、市販の赤玉土を入れた。

  ここに住むまでは、観賞用の洋蘭や観葉植物を趣味としており、口に入れるものを自分で種や苗から作る経験はゼロでした。そんなド素人がどっさりガッツリを目指せたのは、諏訪氏の『おいしさのつくり方――永田農法を家庭菜園で--』に感動したからだと思います。

 有機農法といっても、何が有機で、何が無機なのか、農薬を使わないのが有機なのか、それなら無農薬栽培ではないか、などと疑問を持つほど無知な私ですが、最終的に野菜が栄養として取り込むのは、窒素、リン、カリであるという永田農法式の説明は理解でき、だから液肥だけなのねとすんなり入り込めたのです。

  もう一つ重要な要素は、プランター栽培に使用する土でした。

 我が家はテラスハウスで、地面の畑とは別に、3階のテラスがプランター置き場となります。日照時間は、冬場では1日せいぜい4時間程度の畑とは違い、遮るもののない3階は野菜栽培に最適です。(と思ったのは最初だけ。問題点はあとから湧いてくるのです・・・。)

 永田農法では、軽い日向土を勧めていますが、これが我が家の条件にピッタリだったのです。もし、普通の土を入れたプランターを3階まで運ぶとしたら・・・。まずプランター栽培はあきらめていたでしょう。

  土については他項で述べますが、永田農法の場合は、他の農法に比べて、土に関する労働量が非常に少なくて済むことが最大の利点ではないでしょうか。日向土は数日水にさらしてから、しっかり乾くまで(2~3日以上)日光消毒すれば、何度でも使用可能です。プランター栽培に関しては、連作障害の心配をせず、経済的に清潔な土で野菜を作れるというのもありがたいことです。(3年生の私は、経済性をさらに追求して、プランター輪作の実験を始めました。)

  永田農法の本には、「永田袋」と称する不織紙の植木鉢やトロ箱などが紹介されていますが、私個人の意見としては、そんなに変わったものに手を出さなくても、おうちにある普通の植木鉢で十分です。プランターを買うとしても、永田式で苗の根を切って植え付けるのなら、根は平面に広がるので、さほど深い鉢は不要です。

  水やりや液肥の使用、マルチなど、実際に野菜を作ってみて発見したことを、少しずつでも、公表していきたいと思います。

  ともかく、導入しやすいのが永田農法の良いところ。堆肥も化成肥料も、入れるのはいつでもできます。でも、お宅の土が、まっさらの何の肥料も堆肥も含まない【ただの土】だったら、とりあえず永田農法から始めてみても損はないでしょう。

  ちなみに、永田農法用の液肥は、葉と根を育てる時期と花芽をつける時期の肥料を変える洋蘭の栽培にも重宝していることを付記しておきます。

はじめに

 ちいさな庭のあるテラスハウスに引っ越したのが二年前の春。自給自足の夢に一歩近づいたと、大喜びで、野菜作りを始めることにしました。

2階から見た庭

 三度目の夏野菜の苗の植え付けを終え、今は夏盛り。これからの種まきを計画・準備しています。

植え付け直前の苗

 1坪畑とプランターの家庭菜園をはじめるにあたり、ネットや野菜関係の書籍を調べ、アマゾンで「役に立った」と評価が高かった本を数冊購入。手探りの一年目が始まりました。

 私が目指しているのは、ジャガイモが5個採れて、あー美味しかった、とか、プチトマトを数十個食べて満足・・・などという可愛らしい趣味の家庭菜園ではありません。

 わずかなスペースでも、季節の野菜をどっさり収穫して、毎日ガッツリ食べる。これが目標です。

植え付けた苗が育ち始めた。

 最初から、どっさりガッツリいけたわけではありませんが、冬場なら人参は30本以上、夏場はうちでつくる種類の野菜はスーパーで買う必要がないぐらい、ベビーレタスとルッコラは通年食卓にのせられるという状況で、まずまずの成果といえます。

ただ、ルッコラとベビーレタスミックスの項で述べたように、3年目にして土がダメになってしまったり、輪作できるほどのスペースがないため、去年の夏あたりから畑に植える野菜に輪作障害の危険性が出てくるなど、初年度ではなかった問題が色々と浮上してきました。

  永田農法に関する書籍やネット上の情報は3年前よりも増えていますが、まだまだ、長年の経験に基づいた従来型の農業や有機農法に比べて、心細いことがたくさんあります。

 永田農法について詳しく説明しているというDVDには、「しつもんチケット」がついていて、寄せられた質問に対し、『おいしさのつくり方――永田農法を家庭菜園で--』の著者である諏訪雄一氏が「こたえ」を書いておられて、その「しつもん」と「こたえ」がネット上で見られることに最近気づきました。

 非常にありがたいことですが、残念ながら、永田農法の大先輩である諏訪氏でさえ、まだまだ手探り状態で永田農法を実践しておられることが「こたえ」から読み取ることができます。

 家庭菜園とはいえない規模の、広大な畑をお持ちの諏訪氏とは異なり、私の畑は1坪とテラスにおいたプランターだけ。それでも、ウチで栽培している夏野菜はよそから買ってこなくてよいというのは、ちょっとしたものだと鼻を高くする一方、マンションのベランダだけでどっさりガッツリ家庭菜園をやりたいという方々、既に成功している方々へ向けて、私が持っている情報の全てを公開すれば、お役に立てるのではという思いで、このブログを書くことにしました。

大玉トマト/大玉、中玉、プチトマト/ピーマン、プチトマト

1日の収穫